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『野火 Fires on the Plain 』

弁護士コラム

 先日、友人と塚本晋也監督の作品「野火」(のび)を映画館で観てきました。
塚本晋也監督は、1989年に作品「鉄夫」でローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞し、1997年にはヴェネチア国際映画祭(注1)で審査員を務めるなど 国際的に活躍されている、世界が認める映画監督です。
ただ、私は映画をあまり見る方ではなく、塚本監督の作品を観るのはこれが初めてでした。
そんな私が『野火』を観ようと思ったのは、『野火』が戦争映画だからです。

私は、現在29歳で戦争体験はありません。日本が過去に犯してきた「戦争」とは、一体どんなものなのか。 その実態を知る術としては、戦争体験者の話を聞く、本を読む、資料館へ行く、戦争がテーマのTVを観る、 そして、『戦争映画』を観るなどがあります。
だから、私は『野火』を観たのです。

この作品は、第2次世界戦争末期、フィリピンに攻め込んだ日本兵の彷徨が描かれています。
『野火』を観て感じたことは、戦争が国益を理由に軍のトップが決めて開始され、戦争に関わる全ての人が自らの意思とは無関係に 「戦争の論理」に無理やり引きずりこまれ、人々の人生が「戦争の論理」の中で翻弄される。それが戦争である、ということでした。
戦争により、命を奪い奪われ、人格を破壊され、戦争の犠牲になる人はいつも戦争開始の意思決定に関わらない、平和を望む人たちです。
『野火』は、戦争を人間ドラマのある【感動的なストーリー】としては、描かれていません。ただひたすらに、戦争が残酷で、悲惨で、人が翻弄されていくことが描かれている印象を持ちました。
それが、戦争の実態なのだ と私は考えます。

映画上映後に舞台挨拶があり、塚本晋也監督は、
「今の日本は、何年も前からきな臭い感じがある、今のうちに『野火』を上映しておかないと、上映できなくなるかもしれない」という危機感を持っておられました。
また、「今の日本は、気が付かないうちに、しかもすごい速さでどんどん物事が変わっていっている」とも話されていました。

まさに、2015年7月16日午後、日本が戦争をするリスクを高める「安全保障関連法案」が衆議院本会議で可決され、参議院へ送られました。
「粘り強く国民へ説明をして、国民の理解を得る」と何度も述べ続けた与党は、全国各地で連日のように起こっていた反対運動を無視し、強行採決(!!)に及んだのです。
安全保障関連法案について、全国規模で反対や慎重審議を望む声が高まり、安倍内閣の支持率を不支持率が上回ったにも関わらず、です。

恒久平和主義、立憲主義、国民主権 憲法の基本的価値に反する、この出来事を、私たちは絶対に忘れてはなりません。
今後、参議院での議論が始まろうとしています。まだまだこれからです。これ以上「戦争の論理」の中で人生を翻弄される人を作らないために、一層安全保障関連法案に反対する声を高めていきましょう!!

弁護士 渡 邉 一 生


(注1)この時、北野武監督作品『HANA-BI』が最高賞である金獅子賞を受賞しました。

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